「トム ブラウン(THOM BROWNE)」がアパレルなどに採用した4本線のストライプ柄やブランドのトレードマークでもあるトリコロールカラーのグログランリボンが「アディダス(ADIDAS)」の商標権を侵害しているなどとして、「アディダス」と「トム ブラウン」が争っていた裁判の再審請求について検討するための審理が開かれた。
「アディダス」は、「トム ブラウン」がアパレルなどに採用した4本線のストライプ柄やブランドのトレードマークでもあるトリコロールカラーのグログランリボンが「アディダス」の商標権を侵害しているなどとして、約800万ドル(約11億6000万円)の損害賠償を求めて「トム ブラウン」を提訴していたが、2023年1月、8人の陪審員は「トム ブラウン」の商標権侵害を否定した。
その後、「アディダス」は、「トム ブラウン」が一審のディスカバリー(証拠開示手続き)期間中に5通のメールを「悪意をもって」開示せず、裁判の結果を左右する重要なメールを隠したと主張し、再審を請求した。問題のメールは、従業員がデザイナーのトム・ブラウンに対して、「アディダス」の商品と混同を生じさせる可能性があるため、特定のストライプを使用しないよう注意喚起を行う内容だったという。「トム ブラウン」は、これらのメールは本件訴訟で問題となっている商品とは関連がなく、再審の必要はないと反論している。
再審を認めるかを判断するため、23年12月に開かれた審理では、3人の証人がデザイナー本人とのやり取りを含むメールのタグ付けと処理について尋問を受けた。尋問の大半が、問題となっているメールに「要確認・検討」のタグが付けられるべきだったのに付いていなかったことについての質問だった。ジェド・ラッコフ(Jed Rakoff)裁判長によると、これらの行為が故意か過失かによって、再審請求を認めるかどうかの判断が分かれるという。
「トム・ブラウン」側の代理人は、意図的にメールを隠した事実はないと主張している。また、代理人は、メールを精査する際に「アディダス」と「トム ブラウン」の親会社であるエルメネジルド ゼニア(ERMENEGILDO ZEGNA)に言及するものには「要確認・検討」タグを付けるという基準が設けられていたと主張した。一審の評決が下された23年11月に、経費削減のためタグを付けなかったメールはすべてデータベースから削除したという。これを受けてラッコフ裁判長は、削除したメールの復元にかかる推定費用を割り出すよう命じた。